戦争・・・その深い傷
ある末期がんの老齢の男性の病室を訪れた時のことです。
合成モルヒネを打たれていた男性は、強い薬の影響もあって、
意識があちらこちらへと飛び、せん妄の中にいましたが、
私がベッドの横にしばらく座っていると、ゆっくりと話始めてくれました。
...
私がベッドの横にしばらく座っていると、ゆっくりと話始めてくれました。
「わたしは悪いことをしました・・・。仕方なかったんです。で
も、わたしは人を殺してしまったんです。そうするしかなかった。。。
でも、あれからずっと、私の手にはその時の感触がずっと残っている。」と、
声にならない声で、戦争で人を殺めることになってしまったその時の体験をお話してくださいました。
男性は「今まで90年近く
生きてきて、この話を、家族にも、仲の良い友人にも、誰にも話せずにきた、
苦しかった。」と、話したくても話せない苦しみのことをおっしゃっていました。
ある程度の話が終わった後、突然、何か別の世界が見え始めたようで、男性は、
「こわい。こわい。こわい。ごめんなさい。ごめんなさい。。。」と呟きながら、
「こわい。こわい。こわい。ごめんなさい。ごめんなさい。。。」と呟きながら、
すがるように、私の手を握り懇願しました。
「だいじょうぶ。だいじょうぶですよ。
神さまは罰は与えない。すでに許された中に生きているのです。この世界に生きてきた中で、学んだこと、気付いたこと、そして、幸せと感じたことを、報告すればいいだけ。二度としたくないと思ったことがあるのなら、それは二度とやりたくないし、やらないって、伝えればいいだけ。だから、こわくない。だいじょうぶ。」と、ゆっくりと言葉をかけ、優しく手を握り返すと、
『よかった・・・。ああ、よかった。。。ああ、光が見える。ああ、きれいな光だ。よかった、よかった・・・。』と、ずっと呟きながら、眠りに落ちていき、
数時間後に、息を引き取られました。
神さまは罰は与えない。すでに許された中に生きているのです。この世界に生きてきた中で、学んだこと、気付いたこと、そして、幸せと感じたことを、報告すればいいだけ。二度としたくないと思ったことがあるのなら、それは二度とやりたくないし、やらないって、伝えればいいだけ。だから、こわくない。だいじょうぶ。」と、ゆっくりと言葉をかけ、優しく手を握り返すと、
『よかった・・・。ああ、よかった。。。ああ、光が見える。ああ、きれいな光だ。よかった、よかった・・・。』と、ずっと呟きながら、眠りに落ちていき、
数時間後に、息を引き取られました。
・・・・・・・・・
今の時代を第一線で生きている日本人の中で、戦争を体験している人はどれだけいるのでしょう。
戦争法案と言われている法案を無理にでも通そうとしている内閣に、
戦争を知っている人、人の命を奪ったことのある人はいるのでしょうか。
戦争の映像、戦争を体験した人の話は、わたし達の目にも耳にも入るけれど、
戦争で人を殺めた人の苦しい思いは、どれくらい伝わっているでしょうか。
戦争で人を殺めた人の苦しい思いは、どれくらい伝わっているでしょうか。
戦争は、恐怖と不安と興奮の世界、殺らなければ殺られる狂気の世界です。
人がたやすく死んでいくその場に生きるためには、
信じられないほどの脳内麻薬が生み出されているのでしょう。
人がたやすく死んでいくその場に生きるためには、
信じられないほどの脳内麻薬が生み出されているのでしょう。
では、その狂気の世界から、平時の世界へ戻った人が、
そこから先の人生をどのような心で生きていくのか考えたことはあるでしょうか。
戦争で人を殺めた経験のある人は、その事実を誰にも告げることなく、心に大きな重荷を背負って、罪の意識を抱えて生きていくのです。
家族にすら話すことができず、心の奥深くに大きな闇を抱え、苦しみを抱え生きていくのです。
齢を重ね、自らの死期が近づいた時、この罪悪感は、心の奥深くから溢れ出し、
身悶えするほどの苦しみを自らに浴びせていくことになる。。。
『このような苦しみを、これからの世界を生きる誰にも与えたくない』
わたしに話して聴かせてくださった方は、みな同じことをおっしゃっていました。
心の傷は、表には見えにくいもの。
どのような理由であれ、人を殺める行為に携われば、
心に深い傷を受けることを知っていてほしいと、強く思います。